人はたいがい悩みながら生きています。
しかしその悩みの正体は自分の性格に由来する場合が多いようです。
ここではINFPのケースを例にして、そうした「性格由来の悩み」を解決する方法を考えてみます。
INFP以外のタイプにとっても大きなヒントになると思いますので、ぜひ参考にしてください。
悩む理由がINFP自身にもよくわからない
ネット上にはMBTI関連の性格診断サイトがたくさんあります。
そうしたサイトに最も数多くアクセスするのはINFPタイプの人たちかもしれません。
このサイトは(すでに他のページで申し上げたように)厳密に言えばMBTIサイトではありません。
だからアクセス者の分布は他のMBTI関連サイトとは異なってくると思いますが、それでもやはりINFPに関するアクセスは多めです。
ともあれINFPは自分の性格について悩みを持ちやすく、それゆえ解決方法を求めてこうしたサイトにいらっしゃるということなのでしょう。
では、そもそもこのタイプは自分の性格のどんなところを悩んでいるのでしょうか。
実はINFP自身にもそれがよく理解できておらず、本当はそれが一番の問題点なのかもしれませんね。
それが一番の悩みだね
感情(F)と直観(N)の2機能は意識して使える
INFPについての概要は以下のページでざっと説明しました。
ただし、これは人間の性格をMBTIっぽく16種類に分けた場合の説明です。
そこでこのページではMBTI色を廃し、本来のユング心理学としての観点から説明をしてみたいと思います。
ところでINFPというのはMBTIでの呼び方です。
これはユング心理学で言うところの次のタイプに相当するでしょう。
(厳密には違いますが・・・)
内向感情(IF)が主要機能で
直観(N)を補助機能とするタイプ
そこで、この記事ではINFPを
「内向感情-直観」型
と呼ぶことにします。
これは、
●心理的な態度が「内向(I)」
●主要機能が「感情(F)」
●補助機能が「直観(N)」
という意味です。
まず、この「内向感情-直観」型の性格機能の構造を図にしてみましょう。
これは前述の「寡黙なロマンチスト」のページに掲載した図と同じものです。
ご覧のように感情(F)は本人の中で完全に意識化されています。
この「意識化」とはつまり
自分の感情の働きをちゃんと意識している
ということです。
直観(N)に関しても比較的「意識化」されていて、主要機能である感情(F)をサポートするような立場になっています。
でも「意識化」レベルは感情(F)ほど高くはありません。
一方、思考(T)と感覚(S)は「無意識の領域」に沈んでいます。
ということは、このタイプの人はこれら「無意識の領域」にある機能については
意識的に使うのが苦手だ
ということになります。
自分の心の中に様々な感情をためこむ
この「内向感情-直観」型の性格についてもう少し深く見ていきましょう。
まず、内向感情(IF)とはどういうことかというと、
あらゆる感情を自分の心の中で処理している
ということです。
正反対の性格である外向感情(EF)の人なら何か嬉しいことがあったり、逆に嫌なことがあったりすると
「ねえねえ、ちょっと聞いてよ!」
と周りの人にブチまけてしまいます。
つまり感情面についてはガラス張りになっていて、外からもよくわかるということです。
ところが内向感情(IF)の人の場合、自分の心中を他人に語ったりはしません。
心の扉をピタッと閉め、自分の心の中だけで感情を処理してしまうんですね。
ところで次のページを読んで下さった方は、すでに思考(T)と感情(F)という2種類の判断機能について理解していただけたと思います。
このページの説明にもあるように、
感情(F)機能とは
好きだ、嫌いだ、楽しい、怖い、おもしろい、つまらない、嬉しい、悲しい・・・
といった感情をもとに物事を判断する性格機能のことです。
例としては次のようなパターンがあります。
「あの人は嫌いだから、付き合うのはやめておこう」
「あの映画はおもしろそうだから観よう」
「あの人は怖そうだから会うのはよそう」
ところでこのタイプの人はいったい何を根拠に
好きだ、嫌いだ、楽しい、怖い・・・
などの感情を抱いたのでしょうか。
何か確かな根拠があってそういう感情を抱いたのなら理解できます。
ところが、もし漠然とした理由でそういう感情を抱いだけなら、本人も自分の判断が正しいのか間違っているのか、確信が持てないでしょう。
実はそれこそがこのタイプの悩みの本質だと考えられます。
実体のないことを根拠にして悩んでいる
「内向感情-直観」型は前述のように
内向感情(IF)が主要機能
直観(N)が補助機能
という構造になっています。
・・・ということは、
このタイプが何かに対して感情を抱く時、そこに「判断材料」を供給しているのは
直観(N)じゃないの!?
という話になりますよね。
つまり、確かな裏が取れていなくても、直観的に「ピーン!」と来たことを根拠にして
好きだ、嫌いだ、楽しい、怖い・・・
という判断を下している傾向があるということです。
これは簡単に言えば
実体のないことを根拠にして悩んでいる
ということです。
もし、この人の補助機能が感覚(S)だったとしたら、おそらく状況は異なっていたでしょう。
なぜなら感覚(S)というのは現実主義的な機能だからです。
直観(N)と感覚(S)についての詳しい説明はこちら・・・
したがってこの場合なら現実的な体験、実際の「証拠」や「データ」を根拠にして
好きだ、嫌いだ、楽しい、怖い・・・
という判断をするでしょう。
直観(N)と感覚(S)のどちらを判断材料にする方がよいかは一概には言えません。
どちらも一長一短があるからです。
ただ、ここで1つ直観(N)型の短所を指摘しておきたいと思います。
それはこのタイプの場合、自分の単なる思い込みで「好きだ、嫌いだ・・・」という判断を下しがちだということです。
そしてこういう判断は日常生活の中で、しばしば「取り越し苦労」や「余計な心配事」を量産してしまうことにつながります。
しかも内向感情(IF)なので外に発散できない・・・。
こうしていろんな悩みが心の奥に蓄積されていくのです。
これが「内向感情-直観」型にとっては第1の問題点です。
使い慣れていない思考(T)機能に苦しめられる
「内向感情-直観」型にはもう1つの問題点があります。
このページの最初に載せた図をもう一度見てみましょう。
ご覧の通り、無意識の一番奥底に沈んでいるのが思考(T)です。
ユングはこうした状況にある思考(T)を
幼児的、太古的な思考(T)
と呼んでいます。
これは意識上にある感情(F)や直観(N)ほど洗練されておらず、いざという時も使い物にならない状態だということです。
ところが困ったことに、この未開発の思考(T)機能が呼ばれもしないのに出てくる場合があるのです。
それは次のような場合です。
例えば「これから先」のことについて悩んでいるとします。
ところが「嫌な予感」ばかりして悩みは深まる一方です。
そこで何か解決方法を模索するのですが、考えれば考えるほど悪いことばかり頭に浮かんできます。
そしてますますドツボにはまっていく・・・。
この場合、
考えれば考えるほど悪いことばかり頭に浮かぶ
というのは、普段、ほったらかしにされている思考(T)機能がこういう時に限って自己主張をし始めるということです。
しかもそれは合理的な判断力で問題と向き合える、健全な思考(T)機能ではありません。
ただ、ネガティブな理屈を感情に混ぜ込んでくるだけの野暮な思考(T)機能です。
さて、こうなると、当初は「取り越し苦労」ですんでいた悩みも「被害妄想」のレベルにまで成長してしまいます。
これが「内向感情-直観」型にとっての第2の問題点だと言えます。
自分の性格を客観的に理解することが大事
悩みの正体がどうやら自分の性格そのものに由来すると気づいた場合、多くの人は
性格を変えないとダメなのか・・・
と思うかもしれません。
でも、実際問題としてそれは無理でしょう。
不可能です。
もし、できることがあるとするなら、それは今まで無意識の中にほったらかしにしておいた性格機能(INFPの例で言えば思考と感覚)に光を当てることくらいでしょう。
それを私、ナマケモノは
「無意識の部分を開発する」
「意識化する」
と呼んでいます。
とはいえ、使えるレベルにまで開発する必要はありません。
ただ、光を当てて、自分の闇の部分を認識するくらいの作業で十分です。
「臭いものにフタをする」
のではなく、
とりあえずフタを開けて風通しだけはよくしておく、
ということ。
ちょっと難解な言い方になってしまったかもしれませんが、要は自分の性格の全体像を客観的に理解するということが大切です。
自分には思考(T)と感覚(S)という不得意分野がある。
でも、そういう影になっている部分もまた自分の一部なのだ・・・。
こうした認識を持っているだけで肩の荷が軽くなることは「いろいろある」と思います。