強烈な悲しみや怒りなどを感じた場合、それがトラウマ(心的外傷)となって心の中に居ついてしまうことがあります。
その記憶は何年たってもリアルによみがえり、本人を苦しめます。
それをフラッシュバックと呼びます。
このフラッシュバックはトラウマ反応(PTSD)のうちの1つで、私自身、長年苦しめられてきた症状です。
最近ではかなりおさまってきて精神的にもラクになっています。
こうした自分自身の体験から学んだことや、その克服の仕方について書いてみました。
この記事は一応、お医者さんが書かれた次の本も参考にしています。
『ぼくらの中の「トラウマ」――いたみを癒すということ』
青木省三 著 ちくまプリマー新書
最悪の記憶がリアルに再現されるフラッシュバック
フラッシュバックはトラウマから生まれる
本当のトラウマを知らない人は
「トラウマなんて気持ちの問題なのだから、考え方を変えれば消えるはずだ」
と考えがちです。
でも実際には
トラウマも肉体上の傷も、構造的には同じである
と言われています。
肉体が傷つくと痛みが生じ、血が流れる。
普通、それを放っておく人はいないわけで、すぐに手当をします。
ところが心に傷を受けた場合、それは目に見えないし、手で直接触ることができません。
だから放っておいたために、いつまでも心の中で出血が続いたり、痛みが残る。
それがフラッシュバックなどのトラウマ反応です。
表現は変だけど、
心の中にできた物理的な怪我
といった感じです。
だから考え方を変えるとか、気の持ちようだけで簡単に消滅するものではないのです。
フラッシュバックのやっかいな症状
フラッシュバックは単なる回想とはまったく違います。
本人としては忘れたい過去の記憶がリアルによみがえる。
それによって怒り、悲しみ、恐怖が再現されるのです。
これが人によっては何十年たっても起こり続けます。
しかも何度も思い出すうち、そのネガティブな感情がどんどん増幅されてゆく場合もあります。
そうなると不安感、あるいは怒りがおさまらず、何も手に付かなくなってしまいます。
単に嫌な記憶がよみがえるだけではありません。
人によっては足がすくんだり、震えが来たり、カラダが動かなくなったりもします。
フラッシュバックが起こる原因を知っておこう
今でこそフラッシュバックは迷惑この上ない現象ですが、もともとは生物としての人間が獲得した生存戦略の1つなのです。
フラッシュバックは原始的な本能
太古の昔、人間はまだ言葉を持っていませんでした。
だから失敗経験や危険な経験を他の人に教えたり、教わったりすることができませんでした。
またはっきり言って、当時はまだ記憶力そのものも今の人類ほどには発達していなかったのでしょう。
そこで一度でも危険な目に遭った場合、その記憶を「貴重な教訓」として、二度と同じ目に遭わないように脳の中に取っておく必要がありました。
その自動装置として、何かあった時に過去の苦い経験が強制的に思い出される本能が身についたのです。
いわば人類の生存戦略の1つだとも言えます。
この警告ブザーや警告ランプに相当するのが、現在、私たちがフラッシュバックと呼んでいるトラウマ反応なのです。
今となっては「ありがた迷惑」な本能ですよね。
風邪をひいたら咳が出るのと同じこと
風邪を引いたら咳が出たり、熱が出る。
骨折したら患部が腫れたり、痛みが出る。
それと同様、心に負った傷の症状がフラッシュバックです。
だから何の不思議もない現象です。
よくあるカン違いは
「過去をいつまでも引きずる自分は情けない」
という考え方です。
今の時代、
「心の強い人間でなくてはならない」
という考え方が優勢ですね。
しかしこれは人間という生き物を理解できていない考え方です。
もし今、あなたがフラッシュバックに苦しんでいるのなら、それはあなただけではない、という事実をまず知っておく必要があります。
むしろフラッシュバックに苦しむあなたはごく普通の人間なのです。
やってはいけないフラッシュバック対処法
フラッシュバックを逃れるために、人によっては自分自身を傷つけるという手段を選択する人がいます。
たとえばリストカットなど。
フラッシュバックでよみがえる記憶は実にリアルです。
でも、そのリアルさを少しでも上回る肉体刺激を加えると、とりあえずその場はフラッシュバックの苦しみから逃れることができます。
これは言わば、自分の肉体上に強刺激を加えることで、古い記憶を上書きして消し去ろうという作戦です。
しかしこれは「その場しのぎ」の対処法にすぎません。
フラッシュバックが根本的になくなるわけではありません。
それどころか大切な肉体を傷ものにしてしまう可能性があります。
実は私自身、自分で言うのも恥ずかしいのですが同様の経験があります。
私の場合は自分の顔をパンチで殴ってしまい、大切な奥歯が割れてしまって抜歯になったことがあります(涙)。
フラッシュバックを消す方法
これはフラッシュバックにさんざん悩まされてきた私自身の方法です。
誰にでも通用する方法かどうかはわかりませんが、参考にしていただければと思います。
本来、フラッシュバックは私たち人類にとっては危険を回避するために獲得した本能であって、それは生存戦略の1つだと述べました。
だったらその原理を逆に利用してしまえばよいのではないか、と思ったわけです。
過去のトラウマを忘れよう、忘れようとするから、脳の方は逆にアセって余計に思い出させようとする。
だったら逆にちゃんと思い出してやればいいのです。
では、実際にどうするか?
具体的に言えば、過去の嫌な出来事を文章にするのがいいでしょう。
ただし、思い出したくない記憶を生々しい文章にするのはメチャクチャ苦しいです。
だから、段階を踏んでいく必要があります。
最初はまず、
「自分にはトラウマがあります」
くらいの軽い程度のことを書きます。
時間をおいて、ムリのない範囲で少し詳しく書きます。
また時間をおいて、徐々に詳しく書いていくようにします。
パソコンであればワードなどに書くのがいいでしょう。
スマホなどを使ってボイスレコーダーに吹き込むというのもありますが、私の経験では書く方が効果的です。
さらによいのはブログに書いて公開してしまうことです。
「えっ、公表するなんて・・・」
と思うかもしれません。
でも、ブログなので匿名でいいんです。
そして具体的なことはボカして書き、個人を特定されないようにすることが大切です。
また、過去の実際の出来事を詳細に忠実に書く必要はありません。
何だったら、多少、脚色してもいいでしょう。
とにかく文章にしてみることで、過去の出来事を客観視することができます。
自分の心の中に居座っていた記憶を外に出すことで、意外に心が軽くなるのを感じるでしょう。
日記や非公開の記事より、ブログの公開記事の方が不思議と効果的です。
ブログ記事を書くのはフラッシュバックが起こっていない時がいいです。
その方が冷静に書くことができます。
とりあえず1記事書いてみて、また日を置いて1記事書く、というようにします。
コメント欄についてですが、これは閉鎖しておいてもかまいません。
もしかしたらネガティブなコメントが来るかもしれませんから。
また、SNSでもいいですが、フォロワー数や「いいね」の数が気になってしまうようなら逆効果です。
実はこのブログで私は心理学関係の記事を書いていますが、冷静な気持ちで人間心理について書きつづること自体、自分にとっても大きな癒やしになっています。
何も専門的なことを書く必要はありません。
専門用語とかは不要。
自分の言葉で書けばいいし、むしろその方が共感されると思います。
手前味噌かもしれませんが、私自身が過去の苦い経験を書きつづったのが次の記事です。
よかったら参考にしてください。
https://yourcalling.net/hsp-children/