HSPはMBTIで言えばどのタイプか?
INFPだろうか、INFJだろうか?
それともINTP?
あるいはENFPだったりして・・・。
こういう論議に終止符を打つべく、
今回から2回シリーズで
HSPとMBTIとの関係を論じてみます。
MBTIとHSPは果たして関係があるのか?
このサイトは引っ越し前のものも計算に入れると現時点で8年近く続いています(2021年10月現在)。
当初はMBTIだけを扱ったサイトでした。
このサイトの歴史についてはこちらをお読みください。
このサイトを始めた頃、日本国内でMBTIを扱ったサイトはほぼありませんでした。
今では絶版となったMBTI関連の本の一部を丸写しで紹介しているサイトが1つか2つあっただけ(今はもうなくなったようです)。
日本人がオリジナルの質問表を掲載し、オリジナルの解説を書いたのは私のサイトが日本初、と言うか、たぶんアジア初でした。
一方、HSPに関して言えば、MBTIが有名になる以前から関連書籍が国内でも販売されていました。
エレイン・アーロンさんの本ですけどね。
最初のうち、HSPの概念は日本ではなかなか普及しませんでした。
ところがやがてMBTIが日本でも知られるようになり、そして心理学に興味を持った人たち、特にINFPタイプを中心とする人たちがHSPにも関心を持つようになったのです。
そしてさらに
HSPはMBTIで言えばどのタイプだ?
という話題がネット上を賑わすようになりました。
さて、日本国内でMBTIサイトをいち早く作った人間として、また自分自身がHSPでもあるということで、私はMBTIとHSPの関係をはっきりさせておく必要がある、と思いました。
結論から言えば、
MBTIとHSPを結びつけて考えない方がよい
ということです。
でも、それだけだと
なぜ?
と言われそうですね。
そこでもう少し納得していただけるように説明してみたいと思います。
ユングはMBTIの存在さえ知らなかった
私のこのサイトを読んでくださる方には、まず最初に「事実」をしっかりと認識していただきたいと思います。
それは
MBTIに関する大きな誤解
についての認識です。
この「大きな誤解」は2つあります。
そこでまず、
1番目の大きな誤解についてお話しします。
MBTIというのはご存じのようにアメリカのブリッグス&マイヤーズ親子がまとめあげた「質問紙方式の性格検査」です。
(この「質問紙方式の性格検査」という表現は『MBTIへのいざない』の最初のページで使用されている表現です)
そして、このMBTI理論の基本原理というのは実はブリッグス&マイヤーズ親子のオリジナルではありません。
実はユング心理学のタイプ論をベースに考案されたのです。
そのユングのタイプ論に上記親子が独自の理論、具体的に言えば判断(J)型と知覚(P)型の尺度を追加して作成したものです。
つまり、こういうコトです。
MBTIでは
① 外向(E)型か内向(I)型か
② 感覚(S)型か直観(N)型か
③ 思考(T)型か感覚(S)型か
④ 判断(J)型か知覚(P)型か
の4つの尺度で人を16タイプに分類します。
詳しくはこちらのページで解説しています。
しかし、上記の尺度のうち、①②③についてはユング心理学のタイプ論で述べられている項目です。
この3つの項目にブリッグス&マイヤーズ親子が「④判断(J)型か知覚(P)型か」という項目を追加して作ったのがMBTIなのです。
もう少し正確に言えば、思考(T)と感情(F)を判断機能、感覚(S)と直観(N)を知覚機能として区別したのはユング自身です。
しかし、彼はそれを判断(J)型、知覚(P)型という名称で性格分類の「指標」としては採用しなかったということです。
つまり
「MBTIはブリッグス&マイヤーズ親子のオリジナル理論ではない」
ということ。
これが「1番目の大きな誤解」です。
次に、2番目の大きな誤解について解説します。
そもそもユングはブリッグス&マイヤーズ親子とは面識さえないでしょう。
また、ユングは自分の理論が上記親子に借用され、それがMBTIとして出回っているということも知らなかったでしょう。
MBTI関連のサイトを開いてみると
「ユングが提唱したMBTIは・・・」
「ユングのMBTI理論では・・・」
といった記述をよく見かけます。
しかし、
これは間違っています!!
もう一度、はっきりと書いておきますと、
ユングはMBTIなど知りません!!
繰り返しになりますが、
MBTIはアメリカ人親子がユング理論を借用して作った性格検査法であって、ユング自身はその存在さえ知らない
ということです。
以上がMBTIに関する2つの大きな誤解です。
念のため、もう一度おさらいしておきますね。
●MBTIの発想はブリッグス&マイヤーズ親子のオリジナルではない
●ユングはMBTIには関与していない
ぜひともキモに銘じておいてください。
HSP提唱者エレイン・アーロンはどう考えるだろうか
皆さんはMBTIと言えば有名な心理学理論だとお考えでしょう。
ところが全世界のアカデミックな心理学界においてはMBTIは無視されています。
その理由はちょっと考えてみればわかると思います。
そもそもMBTI創始者とされるブリッグス&マイヤーズ親子は心理学者ではありません。
特に娘のマイヤーズにいたっては推理小説家です。
マイヤーズ親子についての詳細はこちらの記事をどうぞ・・・
シャーロック・ホームズを創作したコナン・ドイルのことを思い出せばわかるように、そもそも推理小説家というのは人間の心理を読み解くのが得意です。
その能力を使ってマイヤーズはMBTIをまとめあげたのだと想像できます。
だから科学的手法として理論体系ができている心理分析の立場からすると、MBTIは一種の「トンデモ」の世界だと見なされているのです。
しかもユング心理学派の人たちにしてみると、MBTIというのは聞いたこともない推理小説家がユング心理学のタイプ論を借用して作った理論に過ぎません。
だからそもそも話題にすることはないのです。
そういうことを念頭に置いた上で、エレイン・アーロン氏の著作を開いてみましょう。
『敏感すぎる私の活かし方』(2020年)の「まえがき」には次のように書かれています。
(HSPにはDOESというガイドラインはあるものの)同じHSPでもさまざまなタイプがいて、それぞれに特徴や過去がある。自分たちをひとつの仲間だと認識したい気持ちはそれとして、くれぐれも、ひとりひとり違うのだということを忘れないように。
(片桐恵理子 訳)
上のDOESについては次の記事に詳しい解説があります。
実はエレイン・アーロン自身、ユング心理学を学んでいる心理療法士の1人です。
だからMBTIには興味がないか、あるいはひょっとすると否定的な考えを持っている可能性もありますね。
だからこそ上記のような注意書きを自分の著書にしたためたのかも知れません。
そして事実、彼女はMBTIについては何も語っていません。
HSPとMBTIはまったく別のジャンルとして考える
私はこれまでユング心理学の勉強もしてきましたし、またMBTIのサイトを作るくらいですからMBTIについても一応理解しているつもりです。
また私自身がHSPであり、そんな自分の性格や体験を通してHSPを深く研究してきました。
そういう私の立場から見ても、HSPとMBTIとの関連性をむりやり考えるのはナンセンスだと思います。
とは言え、HSPの性格にもそれなりに傾向というものがあります。
たとえばHSPの70%は内向(I)型であること。
これはエレイン・アーロン自身の見解です。
そして彼女はまた、HSPの多くは直観(N)型だとも述べています。
この内向(I)型とか直観(N)型というのは本来、ユング心理学の用語ですが、MBTIでもそのままI 型、N型として借用しています。
そして皆さんが知りたいのは、実はこうした「傾向」のことなのかも知れません。
よって、その「傾向」について、次回の後編でお話したいと思います。
後編はこちらです。。。