先日、このブログの読者さんから性格に関するご相談メールをいただきました。
今回はその読者さんの許可を得て、その返事をこのブログ上でさせていただくことにしました。
いただいたメールは一部省略しておりますが、ほぼ全文そのままの状態で掲載しています。
皆さんがご自分の性格タイプを見極める上で参考になると思います。
怒りっぽいのは劣等機能が「感情」だから??
まず最初、次のような短いメールをいただきました。
【1回目のメール】
こんにちは、いつも面白いブログをありがとうございます。
mbtiについて少し聞きたいことがあります。
それはintpが怒りやすいかどうかです。
私は一応自分がintpだと思っているのですが、怒ることがとても多いです(ムカついたことを家で独り言にして話す感じです)
感情が劣等機能になってはいますが、日々の理不尽な出来事、筋が通っていない話にぶち当たることが多いせいか、怒りやすくなってしまっているのかなと思っていますが、実際どうなのでしょうか?
ちなみに、誰かに直接怒るということはめったにしませんが、親族達に愚痴ることはあります。
ナマケモノさんのご意見をいただければ幸いです◡̈*.。
この方は「はやしさん」(仮名)といい、大学2年生、19歳の女性です。
本人は「どうやら自分はINTPのようだ」と考えていらっしゃるようですが、今までいろんなサイトでMBTIテストをやったところ、INFJ、INTJ、ISTJ、ISTPという判定結果が出たこともあるそうです。
ご質問内容を簡単に言えば次のような内容です。
私が怒りっぽいのはINTP、つまり劣等機能が「感情」だからでしょうか?
結論から言えば、怒りっぽさと性格タイプとは関係ありません。
ただ、本人が「自分は怒りっぽいのでは?」と思っているなら、タイプ論の見地から何かアドバイスを差し上げられるのでは・・・と思いました。
そこで上記の短いメールをよく読んでみると、多少、はやしさんの性格タイプについて見えてくるものがあります。
まず、ムカついた人の前ではすぐに怒らず、後で身内にあたるということから、はやしさんは確かに内向型らしいということがわかります。
また、「日々の理不尽な出来事、筋が通っていない話」には怒る・・・ということから、おそらく思考機能が強いだろうと予想できます。
ただし問題はその強い思考機能がはたして優越機能なのかどうか?という点です。
それを知るにはもう少し情報が必要です。
そこで私は彼女に返信を出し、いくつかの質問をさせていただきました。
そして返ってきたのがこの後にご紹介するメールです。
素は誰にも見せない、結局1人でいるのがラク
先の私の質問に答えるカタチでいただいたのが次のメールです。
結構長いので、少しずつ分けて紹介しながら私の解説を加えていきます。
(メールの最初と最後の挨拶的な文章は省略しています)
【2回目のメール】
一応自分の特徴について書きます
(伝わりにくかったり、内容が矛盾してたらゴメンナサイ、一応全部本心なので矛盾してる所はきっと説明不足です。)
独り言がかなり多い、1人の空間で考え事を声に出して話す、Twitterで鍵垢に1人で呟いてたりもする
(以下Twitterでのどうでもいいツイート)
(Tweet 1)
友達からの、鬱だから髪切った、に対する返事を
友達がわざわざ「鬱だから」っていうのは、かまってちゃんだからだと理解して渋々
なんで鬱なん?大丈夫
って聞いたらそれは本当に感情型なん??相手と揉め事にならないようにしてるだけでは?
(Tweet 2)
とあるyoutuberが言ってた
人間はそんな複雑な感情では動かない
みたいなセリフ結構好き
その人を好きになってから、その人に彼女がいたことを知った時、ほとんどの子が諦めるんだと思うんだけどその諦める理由って
彼女さんに迷惑だからとか(=客観)じゃなくて
私の魅力に気づけない男は要らないからという感情(=主観)があるんだとおもってる。
「独り言」、「1人の空間で」、「鍵垢に1人で」といった表現により、はやしさんが内向型であることがよくわかります。
そして次のツイートを読むと、はやしさんはどうやら「私は思考タイプ?、それとも感情タイプ?」という点で少々煩悶していらっしゃるように思えます。
《1つめのツイートについて》
相手のことを心から思ってというより、面倒なのが嫌なので「大丈夫?」と友人に声をかけている自分に気づき、「確かに私は感情タイプじゃないよね」と自己ツッコミを入れています。
こういう「考え過ぎ」の部分は内向的思考から来るとも考えられますが、同時に「相手の言葉の行間を読む」という点では内向的直観という線も見えて来ます。
《2つめのツイートについて》
はやしさんは何ごともゴチャゴチャと感情的に考えるのではなく、何ごともスパッと切っていくように判断するご性格なんですね。
ただ、はやしさんはそういう「感情が淡泊すぎる自分」に何となく引っかかりのようなものを感じていらっしゃるように思えます。
戻ります、、、
超秘密主義、素は誰にも見せない
外では陰キャにしか見えないが、自分は他人より賢くてメンタル強な自信があるし、姉(かなりじゅんすいなinfpらしい)とはバカほど騒ぐ。
そもそも誰かと仲良くなりたいという感情が強くない。
結局1人が楽。
将来は誰もいないところ、森の中とかに住みたいと思っている
「超秘密主義、素は誰にも見せない」とはつまり内向型だということ重ねて述べられていらっしゃるわけですが、むしろ気になったのは次の文章です。
「姉(かなりじゅんすいなinfpらしい)とはバカほど騒ぐ」
はやしさんは自分について「淡泊な人間だなあ・・・」と思う反面、姉に対しては「なんと感情豊かな人なんだろう」という思い(ひょっとして羨ましさ?)があるのかも知れません。
その次の「森の中に住みたい」という隠者志向は内向的直観タイプによく見られる傾向です。
実際、はやしさんは内向的直観もかなり強いように思えます。
人間観察と情報収集が好き
(自分にとってライフハックになるような情報は全てスクショなりメモなりしてる)
好きなイラストも全部保存する
1人の空間でないと本領を発揮できない(絵を描くや歌を歌うなども)し、人と考えるよりも自分で考えた方が無駄がなく合理的だと思ってるので自分を社不だと思っている
感情はないわけじゃない。
が感情に支配されたくないので、常に自分を客観視している自分がいる
自分の性格を「合理的だ」(つまり思考タイプ)と認めつつ、「感情がないわけじゃないが、感情に支配されたくない」というふうに、これまた「淡泊な自分」に言い訳をしていらっしゃるように感じられます。
ルールはかなり大事にする。
ただみんなが真面目過ぎるのも、面白くないので好きじゃない
曲を聴きながら脳内でストーリーやmadを妄想想像しまくる癖がある
(作ったことは無い)
デジャブを経験することが多い
空気?を感じ取るのがとても得意、その場所にいけばそこの雰囲気を読み取れたり、感覚が鋭い
声や性格から、その人の顔を想像して似せる自信がある。
喋り方、滑舌、声のトーン、話す内容、などである程度傾向があると思っている
「ルールはかなり大事にする」というのはまさしく思考タイプですが、その後の文面はまったく別のことが書かれていますね。
「真面目過ぎるのは面白くない、脳内でストーリー、妄想、想像、デジャブ、雰囲気を読み取る・・・」というのはすべて内向的直観が強いことを示しています。
ちなみにはやしさんは自分のことを「感覚が鋭い」とおっしゃっていますが、正しく言えばこれらは「感覚」ではなく「直観」の分野です。
これについては次の記事の解説を参考にしてください。
普段関わってこない、私に興味が無いくせに、自分の利益のために関わってくる人が嫌い
(宿題みせてとか)
(最近怒っていることの1つはこれ)
(もう1つは、大学で外国語を専攻しており、授業で単語や文法を覚えたり、スピーキング、リスニングを勉強したりしているが、ある先生の授業だけ、それらの勉強をしないでネイティブの高校生が読む教科書を先生が文法や単語を解説しないまま、生徒がひたすら読み、翻訳するという授業の意義をひとつも理解できない授業に怒っている。)
ここで、はやしさんは「何々は嫌い」「何々に怒っている」と書いていらっしゃいます。
もしかしたら、こういう表現を見て「この人は感情タイプなのではないか?」と思う人もおられるでしょう。
しかしユング心理学的に分析すると、もう少し別の解釈が成り立ちます。
そもそも感情タイプの人というのは感情機能がハイレベルに発達している人です。
これは心の中に「感情の引き出し」がものすごくたくさんある、ということです。
ところが思考タイプの人の場合、感情機能がまだまだ原始的です。
「感情の引き出し」もせいぜい「好き」と「嫌い」の2段くらいしかありません。
そういう思考タイプならではの「淡泊さ」が上の文章にも出ています。
『新ナマケモノ性格診断』を試していただきました
さて、以上のように分析すると、はやしさんはおそらく内向的思考タイプっぽいけれど、内向的直観タイプの要素もかなりある、と言えるでしょう。
そこで私は彼女に『新ナマケモノ性格診断』のテストをやっていただくようにお願いしました。
すると次のような結果になりました。
外向1―――内向8
思考8―――感情1
感覚3―――直観6
この結果をそのまま読むと次のような判定になります。
内向的思考タイプ
・優越機能は内向的思考
・劣等機能は外向的感情
・補助機能は直観
これを見ると、「なんだ、じゃあMBTIでのINTPという結果と同じじゃないか」とお考えになるでしょう。
しかしユング心理学のタイプ論で考えるなら、はやしさんはINTJと考えるべきなのです。
なぜなら直観(P:知覚機能)よりも思考(J:判断機能)の方が強く出ているからです。
それなのに、なぜMBTIでは「Pタイプ」と判定するのか・・・。
ここにMBTIのおかしな点があるのですが・・・
そのあたりについては次の記事で解説していますので、暇な時にでも読んでおいて下さい。
ここで一番最初の質問に戻りましょう。
はやしさんは「どうも自分は怒りやすいようだ」と自分の性格を気にしていらっしゃるようです。
確かに先に述べたように「感情の引き出し」が少ないため、何ごとも「好きか、嫌いか」の二者択一で断じてしまう傾向がありますよね。
それに加えて、正しくは判断タイプ(J)なので、「何ごともすぐに結論を出してしまおう」という傾向があるのではないでしょうか。
また、はやしさんは「1人でいるのが一番ラク」だということなんですよね。
これは大勢の人たちといっしょにいると、そのぶん考えなければならない要件が増えるため、判断するのに時間がかかる。
それが嫌・・・。
つまり1人の方がサッと判断し、処理できる、という気持ちがあるのかも知れません。
こうした性格傾向や考え方が合わさって一種の「怒りやすさ」になっているように思います。
アドバイスを差し上げるとすれば、
何ごとについても即断せず、もう少し長い目で見る習慣をつけましょう
ということになります。
劣等機能こそ人生における永遠のテーマ
はやしさんと似たような方で、「自分は思考タイプだろうか、それとも直観タイプだろうか?」と悩んでいる方もおられるでしょう。
そういう場合、「自分の優越機能は何か」と考えるより、「自分の劣等機能は何だろう?」と考えた方が正しい結論に到達しやすいです。
劣等機能というのは人生において常に悩まされることになる「永遠のテーマ」です。
生涯、なかなか解決されることはありません。
いつも頭の中にこびりついていて離れないため、逆にそれが優越機能なのだろうか?とカン違いする場合も多いです。
ちょうどはやしさんが「自分は感情タイプなのかな?」と疑ったり、お姉さんが感情タイプであることを意識するのも実は「はやしさんの劣等機能が感情である」からこそです。
だから逆に優越機能は思考だと判定できるわけです。
一方、もし直観が優越機能なら、もっともっと感覚機能についての悩みが出てくるはずです。
しかし、はやしさんの書いたメールには金銭的な悩みとか、自分の体型とか、ファッションとか、そういった物質的な問題がまったく出てきません。
したがって感覚は劣等機能ではないようだ・・・と判定できるのです。
再度、申し上げると、はやしさんは生涯、劣等機能である「自分の感情」と向き合っていくことになります。
すでに述べたように劣等機能は生きている限り「永遠のテーマ」となるからです。
その問題は解決されないかもしれませんが、「向きあう」という姿勢がある限り、人間的には進化していくはずです。