ナマケモノ心理学コラム

ネットで情報を集め終わった時点で思考停止

星3個の心理

 

アマゾンで本を買う時、誰もが参考にするのが他人の書評や評価です。

しかし気をつけないと、そうした「他人が先に付けた評価」は私たちの脳を確実に退化させていきます。

これはアマゾンに限らず、現代社会のあらゆるところで起きている現象かも知れません。

 

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「すでに付いている他人の評価」というバイアス

 

アマゾンで本を購入する場合など、どうしても気になってしまうのが他の人たちの評価だと思います。

ちょっと気になる本があっても★が2個とか3個しか付いていなければ購入をためらってしまう。

もっと評価の高い別の本を探してしまう。

 

最近、実物よりも情報が先行する時代なので、この「すでに付いている他人の評価」というのが自分の行動を左右する大きなバイアスになってしまうわけです。

 

 

さらに不思議なのは実際に購入して、その本を読んだ人に対してさえ、このバイアスは大きな影響を与えるという事実です。

 

たとえば★3個が平均評価となっている本を読んでみる。

自分としては「それなりにいい本だ」と思っても、読んだ後、その本に★5個を付けるというのはちょっとした勇気が必要だったりします。

大部分の人が★3個なわけだから、ここで自分だけが★5個を付けるなんて、なんだかバカみたい・・・というわけで、結局、他の人たちに合わせて★3個の評価を付けてしまう。

こういう人が多いのではないでしょうか。

 

つまり他の人が付けた評価が先にわかってしまうと、自分自身が付ける評価のみならず、自分の認知行動までもが歪められてしまうということです。

 

 

「自分はそんなことないよ」

と多くの人は思っています。

でも、こうした「すでに付いている他人の評価」というバイアスは無意識のうちに自分の評価行動に影響を与えているものです。

 

 

自分オリジナルの評価をするのは難しい

 

アマゾンの評価と同じようなことがTwitterやYouTubeのグッドボタン、バッドボタンの場合にも言えます。

 

例えばYouTubeだと、だいたい視聴した人の10%くらいがこの評価ボタンを押すようです。

その際、いったいどういう基準でその動画がグッドなのか、バッドなのか・・・。

本来、その評価基準は人それぞれのはず。

 

ところがすでにグッドボタンが1,000個付いていて、バッドが20個くらいだと、

「ああ、この動画は大勢が評価している素晴らしい動画に違いない」

という「すでに付いている他人の評価」バイアスがかかってしまう。

そこで、それに引きずられるようにして自分も「いいね」を押してしまう。

 

 

こういうふうにして、他人の評価、さらには他人の意見や主張に引きずられるという現象は、今、世の中の至るところで起きています。

 

すでに述べましたが、今は「実物よりも情報が先行する時代」です。

だから皆、「先取りした情報」というフレームを通してモノを見る、モノを考える。

そして自分が下す評価は案外、他人がすでに下した評価を単に後追いしているだけだったりします。

 

 

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人が考えた事を自分が考えた事だとカン違いする脳

 

いきなり個人名を出して本人には悪いけれど、例えばひろゆきさんが何かものを言うと、今、多くの人は

「だよね、だよね、オレもそう思う!」

と同調してしまう。

 

そして、まるで自分自身も前々からそう思っていたように思い込んでしまう。

 

この、他人の評価や考えを自分のものにしてしまうというのは、言うなれば

「思考のショートカット」

だと思います。

 

つまり、自分自身で悩み、考えるのが面倒だ、あるいはそもそも自分自身で脳に汗をかいて

考えるという習慣がないため、人の思想をそのまま借用してしまうのです。

 

 

これだけ情報が簡単に手に入る時代になると、とにかくみんな自分で考えない。

自分で考え、自分で結論を出す前に、先に情報を集めに行く。

 

そして、集めた情報を自分の中で編集し、そこで出てきた結論をまるで自分の「思考の結果」だと思い込んでしまう・・・。

 

私はこういうのを、

「情報の餌付けを受けている状態」

だと思っています。

 

つまり、自分では何もできない雛(ヒナ)が親鳥から口移しにエサをもらっているようなものです。

今後、こうした状態がずっと続いていくなら、そのうち人間ならではの「考える脳」は確実に退化します。

これは人類にとって温暖化現象と同じくらいにヤバイことです。

 

 

曖昧な情報の方が思考能力を活性化させる

 

話をまたアマゾンに戻します。

 

アマゾンの評価をもっと的確なものにするにはどうすればいいでしょうか。

そこでちょっと、次のようなシチュエーションを考えてみました。

 

Aさん、Bさん、Cさんの3人が同じ本を読んだとします。

そして3人とも★3個を付けたとします。

しかし、その評価に込められた各人の思いはそれぞれ違っているかも知れません。

 

さんは普段、どの本にも★4個か★5個を付けているけれど、この本に限っては「内容が悪い」と思ったので★3個にした。

さんはよほど酷い本でない限り、基本的に★3個を付けておくという主義なので、今回もまたいつも通り★3個にした。

さんはもともと本を読むのは大嫌いなので、本という本はすべて★1個か★2個を付けたいところだが、この本に限っては少し面白く感じたので★3個にした。

こういう場合、

Aさんにしてみればこの本は最悪!

Bさんにとっては平均点をクリアしている本。

Cさんにとっては自分の読書史上、まれに見る良い本。

 

・・・となると、その人の過去の評価平均から上または下に「どれだけずれているか」、つまり各人の中での偏差を計算に入れ、それを平均して数値化したものをその書籍の評価として算出した方が的確なのではないかと思います。

 

これは技術的には十分可能なことです。

 

 

このやり方だと、その評価の中に「読んだ人それぞれの個性」が入っていることになります。

・・・となると、

「わかるようで、わかりにく評価」

となる。

 

一見、曖昧に思えますが、実はこうした曖昧な情報の方が「自分で考え直す余地」を生んでくれるものです。

その結果、自分自身の思考能力の活性化にもつながるのではないでしょうか。

 

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