新ナマケモノ性格診断

性格は変わっても性格タイプは変わらない

 

前回の記事が長過ぎたため、それを2つに分割し、その後半部分を加筆修正したのが今回の記事です。

 

前回の記事ではユング心理学における「判断」と「知覚」という言葉の意味を説明しました

同時に、MBTIではそれらが違う意味で使われているということも述べました。

 

今回の記事では話を一歩前に進めて、性格と性格タイプの違いについて解説します。

 

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MBTIに出てくる判断的態度と知覚的態度の正体

 

前回の記事で、MBTIに出てくる判断的態度と知覚的態度という用語は「おかしいぞ!」という話をしました。

 

その理由をもう一度、簡単にまとめておきます。

ユング心理学では、

「判断的、知覚的」は性格機能の話。

「態度」は外向と内向についての話。

 

ところがMBTIでは

「判断的態度」「知覚的態度」というふうに、「性格機能」と「態度」とが一緒くたになっている。

 

そして、これはMBTIを創始したマイヤーズとブリッグス親娘がユング心理学に対する理解が不十分だったからだろう…と私は結論を下しました。

 

 

それでは、MBTIではどういう考えで判断的態度とか知覚的態度という用語を作成し、使用しているのでしょうか。

それについては、『MBTIへのいざない』(25p~26p)で説明されています。

その記述を一部抜き出してご紹介します。

 

まずはMBTIにおける判断的態度についての記述から見てみましょう。

判断的態度を指向する人は、締め切りよりも前に余裕をもって仕事を仕上げることに、満足を覚えやすいだろう。外界において判断したり、ものごとに決着をつけようとする衝動を持っているからだ。・・・・・・彼らは、カレンダーや目標達成シートなどに愛着をもち、たいていの場合、仕事を仕上げるための優先順位を設けることに対して、熟練している。彼らのやらなければならない「課題リスト(to-do list)」は課題の優先順位がきれいに整理されているだろう。それゆえに、自分が望んだ結果にひかれすぎて、ときおりもっと良い結果をもたらすかもしれない新しい情報を遮断していることがある。

 

次はMBTIにおける知覚的態度についての記述です。

知覚的態度を指向する人も当然具体的な計画を立てそれに従うこともできるのだが、そういうとき彼らは、「私がいまこの時点で計画したり決断を下してしまった場合、後で何かもっと良いことが起こったり、後になってもっと多くのよい情報を得られたりしたら、対応できるのだろうか?」とどこか迷っているだろう。・・・・・・一般的に知覚的態度を指向する人は、流れにまかせることが最も良い結果を導き出すということに自信をもっているため、周囲には、綿密でかつ正確なスケジュールを立てることを放棄してのんきに構えているように見えることがある。・・・・・・この傾向の落とし穴は、外界の情報や状況を知覚することに力を注ぎすぎて、行動に移す機会を失うことである。

 

皆さん、これを読んで何か感じませんか?

これはユングが言う性格タイプの話ではありません。

 

性格タイプっていうのは、外向性、内向性、そして思考、感情、感覚、直観という、性格を構成するエレメント的な話だったよね

 

では、MBTIが言う判断的態度とか知覚的態度とは、いったい何の話なのでしょうか?

そうです!

MBTIの「判断的態度」と「知覚的態度」は、ふだん私たちが漠然と考える「人の性格」についての話なのです。

 

要するに、話を広げ過ぎなんだわ!

 

 

性格と性格タイプはそもそも別の概念

 

皆さんは性格と性格タイプは別物だということをご存知ですか?

私たちは性格を語る場合、だいたい次のような表現をよく使います。

彼は短気だ

私は寂しがり屋だ。

彼女はあわてん坊だよ

うちの社長はせっかちだ

僕の弟は優柔不断なんだ

あなたは優しい人ですね

あの人はいい性格しているよ

あいつは性格の悪いやつだ

めめしいやつだな

 

人は自分の性格について語る場合もあれば、他人の性格について語る場合もあります。

いずれにせよ性格とは「感じ方の問題」です。

 

だから例えば、

あいつは嫌みな性格をしているよね

と言う人がいるかと思えば、

いやいや、意外に親切な所もあるよ

という人もいます。

このように性格というのは、その人の感じ方によって変わってくるのです。

 

また、同じ人であっても、

あいつ、以前は性格の悪いやつだと思っていたけど、意外に親切なやつだということがわかってきたよ

というふうに、同じ人であっても感じ方が変化する場合もありますよね。

 

こういうのが性格です。

その人その人の、その時その時の価値観によって変わってくるもの。

それが性格です。

 

 

ところが、

ユングが言う「性格タイプ」というのは性格よりもっと内側にある骨格のようなものです。

その骨格、つまり性格タイプは基本的に生涯を通じて変わりません。

 

 

それに対して、骨格にくっ付いている肉や脂肪などが「性格」に相当するのです。

これはけっこう変わりますよね。

 

では、性格はどんな時に変わるのか?

いろんなケースがあります。

性格は環境によって、付き合う相手によって、そして何よりも人生経験によって確実に変わります。

 

また、私たちは何か特別な体験をしたり、感動するような本を読んだり、スゴい人に出会ったりして、人生観がガラリと変わることもあります。

そういう場合、自分の「性格」が確かに変わったと感じることがあります。

 

 

こういう見方を身に付けた上で、もう一度、上述の『MBTIへのいざない』の文章を読んでみてください。

この判断的態度と知覚的態度についての説明をもう一度読んでみてください。

 

何かをする場合、その人が(あるいは自分が)

優先順位を付けて計画的にやっている

と見るか、

流れにまかせて、のんきに構えている

と見るかは、あくまでもその人のその時の感じ方に過ぎません。

 

だからこれは性格タイプの話ではなく、単に性格の話をしているのだと考えられるのです。

 

 

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MBTIは性格と性格タイプをごちゃ混ぜにしている

 

ここでまでの説明でおわかりいただけたと思いますが、MBTIは「性格タイプ」と「性格」とを”ごちゃ混ぜ”にした判定法だということですね。

 

皆さんの中には、

MBTIの結果が以前と変わってしまった…

という経験をした人がたくさんいらっしゃるでしょう?

 

でも、それは性格タイプが変わったのではなく、性格がちょっと変わっただけだと考えた方がいいでしょう。

なぜならMBTIのような16タイプの性格検査法は「本来、不変の性格タイプ」を調べるツールではないからです。

 

すごく極端なことを言えば、16タイプの性格検査はその日の気分を当てる「おみくじ」みたいなものだね

 

MBTIとは対象的に、ユング心理学の性格タイプの判定には高度な自己分析力が必要です。

だから本来、選択肢を選んでいくだけで判定できるようなものではないのです。

だから若い頃は自分が外向的だと思っていても、10年後に「実は内向的だった」と気づくことなどがよくあります。

それは性格タイプが変化したのではなく、自己分析力が向上した結果です。

 

 

この『ナマケモノ心理学』では「旧ナマケモノ性格診断」でMBTIふうの判定方法を紹介しています。

しかしその結果だけで満足してしまってはいけません。

「旧ナマケモノ性格診断」をやった後は、「新ナマケモノ性格診断」もぜひ読んでみてください。

そこでユング心理学に基づく自分自身の骨格、つまり「性格タイプ」について考えていただきたいと思います。

 

 

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