HSP・トラウマ・愛着障害

1人でいても孤独感を感じないですむ能力

独りでいる能力

 

「1人でいられる能力」には2種類あります。

 

まず、「1人でしかいられない能力」。

次に、「1人でも平気でいられる能力」。

 

前者はいわゆる「ひきこもり系」。

しかし後者は違います。

 

では、この違いはどうして生まれるのでしょうか?

 

事情は人によって異なるかもしれません。

でも多くの場合、それは子供時代の愛着形成の問題から来るようです。

 

ご自分の愛着障害を考える場合、まず、自分にはこの

「1人でも平気でいられる能力」

があるかどうかを考えてみるといいですね。

 

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1人でいても孤独感を感じないですむ能力

 

ドナルド・ウィニコットというイギリスの小児科医・精神科医がいます。

(もう50年前にお亡くなりになりましたけど)

この人が考え出した概念に次のようなものがあります。

 

「独りでいる能力」

the capacity to be alone

 

皆さんは孤独を楽しめる人ですか?

若い人の中には

「誰かといっしょにいないと寂しくてしかたない」

と感じる人が多いようです。

 

ところが

「1人でも十分に楽しめるから寂しくないよ」

っていう人もいますよね。

先ほどのウィニコットさんはこういう人を

「独りでいる能力の持ち主」

と呼びました。

 

 

ただし、これは「引きこもり」とは違います。

「引きこもり」というのは他人といるのが苦痛なので、他人を避けて1人でいる、という状態ですよね。

 

ところがウィニコットさんのいう「独りでいる能力」とは

「他人ともうまくやっていけるけど、1人でも平気だよ」

という意味です。

 

さて、皆さんはどちらに近いでしょうか?

 

 

この「独りでいる能力」がある人とない人の違いがなぜ出てくるのかというと、どうやらそれは幼少期の愛着形成に原因があるようです。

 

 

安全基地を自分の中に作ることができたかどうか

 

以前、下の記事で安全基地という言葉について説明しました。

子供時代を引きずる大人
その「生きにくさ」の原因は愛着障害かもしれない 生きていくことに困難を感じている人って、たくさんいると思います。 そういう人たちの多くはたとえばMBTIやHSPなどの入門...

 

もう一度、さらっとおさらいしておきますね。

 

幼児というのは、基本的にお母さんにベッタリです。

でも、少しずつ外界への興味、好奇心が育ってくると、お母さん以外に目を向け始めます。

たとえば犬を見て、ちょっとそばに寄ってみたりする。

しかし「ワン!」と吠えられると、泣き叫んでお母さんの胸に飛び込む。

しばらくすると先ほどの恐怖感がおさまり、泣きやむ。

するとまたその子は外界に目を向ける。

そうやって、少しずつ行動半径を広げつつ、また何かあるとお母さんのところに逃げ帰る。

そして立ち直ると、また冒険をしに出て行く。

 

この場合、お母さんはその子にとっては避難所であるとともに、愛情というエネルギーの補給基地にもなっているわけです。

 

それを愛着理論では

お母さんが安全基地になっている

と表現します。

 

もちろん安全基地になるのはお母さんだけとは限りません。

家庭によってはお父さんだったり、あるいは祖父母だったり。

時には里親とか福祉施設の職員さんだったりします。

 

 

ところで、お母さんたち大人がその子の安全基地としての役目を果たす期間はそう長くありません。

一般的には3歳くらいまで、ということになっています。

 

ではなぜ、その子からお母さんという安全基地がなくなってしまうのでしょうか。

それは、子供自身が自分の心のなかに安全基地を作るからです。

 

 

最初のうちは、いつでも逃げ帰れる場所ということで、リアルにお母さんという安全基地が存在していました。

 

ところがそのうち、子供は自分の心の中でお母さんの存在を思い出せるようになる。

すると、お母さんから離れたところにいて何か恐怖を感じることに出会っても、お母さんが心の中にいるだけで恐怖感が収まり、気持ちが安定してくるようになります。

 

もちろん実際には何かあるたびに子供はお母さんを思い出すわけではありません。

 

でも、それまで何度もお母さんのところに逃げ帰って気持ちを落ち着かせるという繰り返しの中で、子供は自分自身で心をコントロールする能力を身につけていくのです。

 

 

それを愛着理論では

「子供は自分の中に安全基地を作った」

と考えます。

 

そしてこれを

内在化

と呼びます。

 

 

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安全基地は大人になってからも存在し続ける

 

子供のうちに今述べた内在化ができている人の場合、その後、情緒が安定した状態で成長できると言われています。

 

また、そういう人はトラウマとは無縁の大人になるそうです。

 

逆にいえば、子供の頃、愛着形成がうまくなされず、安全基地の内在化ができなかった人の場合、何かでつまずくたびにそれがトラウマになりやすいそうです。

 

 

さらに言えば、最初に述べたように、「1人でいても孤独感を感じないですむ能力」が育ちにくいみたいです。

 

 

これを愛着スタイルで言えばどうなるでしょうか。

 

 

まず、不安型の場合、これは明らかに内在化が不十分なタイプだと言えるでしょう。

 

このタイプには孤独に弱い人が多いです。

また、恋愛依存型の人、つまり常に誰かに愛してもらっているという実感がないと生きていけないという人もこのタイプです。

 

▼大人の愛着スタイルについてはこちらの記事に詳しい説明があります。

大人の愛着障害 基礎編
愛着障害は大人版と子供版とでどう違うのか? 子供の愛着スタイルについては下の記事で詳しく書きました。 ☞『幼い頃、親たちからどんな愛情貯金を受けたか?』 ...

 

 

見下し回避型恐がり回避型の場合、いずれも「回避型」というだけあって人間関係を避ける傾向にあります。

※「見下し回避型」、「恐がり回避型」はいずれもこのサイト独自の表現です。

 

人間関係を回避して1人でいるのが好きなわけだから、一見、内在化ができているように思われます。

 

しかし、本当に内在化された「独りでいる能力」の持ち主というのは、他人といっしょにいても自己を保っていられるため、つまり他人に振り回されないため、それはそれで楽しめる人のことを言います。

 

そういう意味では回避型と呼ばれる愛着スタイルの人は内在化が不十分だとも考えられます。

 

 

だから結局、内在化がうまくいったタイプというのは安心型だけということになりますね。

 

 

内在化が達成されずに大人になった場合

 

では、安全基地の内在化が不十分だった人の場合、人生すべてうまく行かないのでしょうか?

 

いえいえ、とんでもない!

確かに、本来、幼いうちに内在化が達成できていればよかったでしょうけれど、全員が全員、そんなうまくいくわけありません。

 

では大人になってからでも内在化はできるの?

・・・という疑問が出てきますね。

 

これについては私自身、まだ確信はありません。

人によっては

「恋人をつくればいいんだよ」

と軽々しく言いますが、その「恋人を作る」ということ自体が困難だという場合もありますよね。

 

 

私自身は「よい人生を送る」には、内在化とはまた別の方法があると考えています。

それはまだ私の中では十分に理論化されてはいませんが、今後、少しずつこのサイト上で考えていきたいと思います。

 

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