ユング心理学では人間のタイプを内向型と外向型に大きく分類します。
この2タイプのうち、何かと悩みを抱えがちなのが内向型です。
今回はこうした内向型の人の悩みをケーススタディーとして取り上げて、私、ナマケモノからの回答という形でお答えします。
「内向型で損ばかり・・・とても悔しいです」
以下は2021年9月28日にYahoo!知恵袋に投稿された質問で、原文のまま転載させていただきました。
この質問に1人の方がとてもよい回答をしていらっしゃるのですが、質問者はどうやら納得してはおられないようです。
【質問者】
内向型で損する事が多いです。
内向型で引っ込み思案というか大人しいという事もあり、仕事を頑張っても誰もそのことに気づかず、頑張れと言われて言われなくても死ぬほど頑張ってるのになーと悔しく感じたり、自分の意見言っても聞いてもらえない、自分のアピールが下手でまともに評価してもらえず誰にも自分のことをわかってくれなくて悔しいです。
また、気軽に相談できる人もいません。人間関係をうまく築けなくて寂しいです。大人しくって自分から誘えず、意思を言わなくて良いように使われたり無視されたりしてきました。
アピール上手というか自分の良さやメリットを相手に理解してもらい、人間関係をうまく構築していくにはにはどうしたら良いですか?
【回答者】
影で頑張ってる縁の下の力持ちの方がかっこいいと思いますけどねぇ
【質問者】
見てる人は見てますが、前に出ていくタイプの人にいい所持ってかれそうで不安になり自分もそうならなきゃと思ってしまいます。
【回答者】
誰かに見てもらうことは重要ではないです。出しゃばりな人より精神面で上に行きましょう
【質問者】
ありがとうございました
ここからは「ナマケモノからの回答」というカタチで私の考えを書いてみました。
「内向型だから損ばかり」というのは本当か?
あなたは「内向型だから損をすることが多い」と思っていらっしゃるのですね。
これはある意味正しく、ある意味、間違っています。
最初にこの点について考えてみたいと思います。
まず、「内向型だと損することが多い」というのはある意味では正解です。
なぜならこの世界はどちらか言えば外向型向きに作られているからです。
私たちの社会は他人から評価されることで自分のポジションを確立していく世界です。
実際、小学校の時から先生に成績を評価され、社会人になってからは職場や取引先などから評価され続けることになります。
(そして私たち自身、他人を常に評価しています)
人に自分を高く評価してもらうためには自分の実力をアピールしないといけません。
そして、それが得意なのが外向型です。
そういう意味では自己アピールの下手な内向型というのは確かに「損な性格」だと言えます。
しかしここで見落としていることが1つあります。
それは外向型の人たちも外向型ゆえに損をすることが多いということ。
なぜなら外向型の人というのは何かと悪目立ちしやすい。
そのぶん、やり玉にあげられやすいという損な面があるのです。
ただし「損」というものの受け止め方については内向型と外向型でずいぶん違います。
内向型の場合、「一昨日、損した。昨日も損した。今日もまた損した・・・」というふうに「毎日、損ばかりしている」という思いが自分の中に蓄積されていきます。
ところが外向型の場合、昨日とんでもない損をしたとしても、今日新しく損をすると、昨日損した記憶が「今日の新しい損」によって上書きされてしまいます。
だから、かりに毎日損をしていたとしても、外向型の人は「損“ばかり”している」とは思っていないようです。
「ああ、今日は損したー」
と大騒ぎしている外向型に
「いつものことじゃない」
と言うと、
「えっ、そうだっけ?」
と返ってくる場合が多いのではないでしょうか。
これは単に「学習能力が足りない」とも言えますけれど。
ともあれ、このように考えると、あなたが言うように「内向型だから損をすることが多い」というのは必ずしも正しくありません。
損をするのは外向型だって同じ。
ただし「1つ1つの損を重たく受けとめ、忘れられない」という性格については内向型にとって損な部分だと言えそうです。
他人に自分を理解してもらう必要はない
もう一度、話を戻しましょう。
あなたは次のような悩みを抱えていらっしゃいます。
仕事は自分なりにがんばってはいるけれども、引っ込み思案だから自分の努力を周囲にアピールできず、評価されない。
だから悔しい・・・。
では、ここで1つお聞きしたいことがあります。
あなたの周りに、あなたと同じような悩みを抱えている人はおられますか?
つまり「本人的にはものすごくがんばっているのに誰にも評価されず、人知れず悩んでいる」という人はあなたの職場に他にもいらっしゃいますか?
ちょっと、思い出せませんか?
それでは質問の仕方を変えましょう。
あなたの職場で、あなたの目から見て、「そんなにがんばっているとは思えない」とか、「がんばりが足りないな」と感じる人はいらっしゃいませんか?
そんな人なら1人や2人は心当たりがあるでしょう。
かりに今の職場にそういう人がいなくても、過去に出会った人の中で、そう感じる人は何人か(何十人も)いたはずです。
・・・で、ここが大切なところです。
あなたの目からみて、「この人、がんばっていない」と感じた人も、実はその人なりに死ぬほどがんばっていたのかも知れません。
ただ、自己アピールが下手だったか、もしくは最初から周囲にアピールする気がなかったため、あなたもその人の「死ぬほどのがんばり」に気づかなかった可能性がありますよね。
その人があなたと同じく内向型だったか、それとも外向型だったかはわかりません。
しかし1つ言えるのは、人間というものはそう簡単に他人を理解できるものではないし、また理解してもらえるものでもない、ということです。
確かにあなたから見てアピール上手な人もいるでしょう。
しかし彼らにしても、実は本人ががんばっていると思っているうちの全部が評価されているわけではありません。
(外向型は「数打てば当たる」主義)
そう考えると「他人を理解しよう」とか「他人に理解してもらおう」などという難しいことにこだわることこそ時間の浪費、エネルギーの無駄づかいだということがわかります。
そんなことで悩むより、最初から「他人に理解してもらう必要はない」と割り切ってしまった方が建設的な気分になれるのではないでしょうか。
内向型の方が人間関係の失敗は小さくてすむ
また、あなたは内向型のせいで人間関係が下手、だから何ごともうまくいかない・・・と思っておられるようです。
しかし外向的な人にも人間関係が苦手な人はたくさんいます。
ただし外向型の場合は引っ込み思案で失敗するわけではありません。
逆に外向型は出しゃばり過ぎて顰蹙(ひんしゅく)を買うとか、強気に出すぎて敵をたくさん作ってしまうというカタチで人間関係で大失敗しやすいのです。
その失敗のスケールという点から考えると、内向型よりはるかに大きな痛みを伴うことになります。
ところがこれも先ほどの話と似ていますが、人間関係上の失敗についての受け止め方が外向型と内向型とでは違うのです。
内向型の場合、自分が人間関係が苦手なことに早めに気づきます。
(あなたもそうですよね)
それに対し、外向型の場合は自分が人間関係をこじらせている事実になかなか気づかないのです。
そして決定的に人間関係が破綻してから、やっと失敗していたことに気づくというパターンが多いです。
そう考えると内向型は人間関係の悩みに早めに気づくため、苦しむ期間は確かに長い。
しかし決定的な破綻にまでは至らない・・・というラッキーな側面があります。
そう考えると「内向型だって捨てたものじゃない」と思いませんか?