今回は書籍のレビューです。
といっても最近読んだ本ではありません。
「生きづらさ」を抱える人たちの間で、
10年間、読み続けられている有名な本です。
もしかしたらこの本が
あなたを救うことになるかも・・・
そんな思いでご紹介させていただきます。
その生きづらさの原因は愛着障害だったのかも
生きづらさを抱える人たちが世界中にはたくさんいます。
そういう人たちは解決の糸口を求めて心理学の扉を開きます。
最近だと多くの人がまずネット上のMBTIなどで自分の性格診断をします。
そこからさらにHSPなどにも興味を覚え、本やサイトで勉強しまくる。
中には
「もしかして自分は発達障害かも?」
と思い、心療内科に行く人もいらっしゃるでしょう。
しかし期待どおり(?)の診断が出ずにガッカリ・・・、そしてまた悩むという人も多いようですね。
そういう人たちが最終的にたどりつくのが愛着障害の問題です。
愛着障害は全人口の約3分の1の人が何らかのカタチで持っているとも言われます。
愛着障害というものをじっくり学ぶと自分についての実にさまざまな疑問が解決される場合があります。
それはたとえば次のような疑問です。
なぜ自分は自己肯定感が低いのか?
なぜ「自分責め」ばかりしてしまうのか?
なぜ人間関係がうまくいかないのか?
なぜ恋人ができないのか?
なぜ人を愛せないのか?
なぜいつも不安なのか?
なぜ職場を転々とするのか?
なぜ友だちができにくいのか?
なぜ親とうまくいかないのか?
こういったことの真の原因を教えてくれるのが愛着障害だと思います。
赤ちゃんの頃にどれだけ愛情を与えてもらったか
そこで、今回は愛着障害を初めて学ぶという方に1冊の本をご紹介したいと思います。
『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』(岡田尊司 著)です。
この本によれば、人生のスタート地点である「0歳から1歳半までの期間」がその後の人生に大きな影響を与えるそうです。
この期間に養育者(多くの場合は親)があなたにどう接したかにより、あなたのその後の人生の愛着パターンが決定されるということです。
ここで養育者というのをかりに母親と考え、例をあげて簡単に説明してみますね。
赤ちゃんが泣いた時、
母親が抱いてあやしてくれます。
すると赤ちゃんは安心して泣きやみます。
実はこの段階が人間の愛着形成にとって一番大切だそうです。
ここを無事にクリアした子どもは次のステージに進みます。
歩けるようになると、赤ちゃんは
ちょっと冒険をしてみたくなります。
でも、転んだりして泣くと、
すぐ母親が駆けつけてきて
抱き上げてくれます。
すると赤ちゃんは安心して泣きやみます。
ここまでのパターンを何回も何回も繰り返すうちに、赤ちゃんの中で1つの愛着パターンが形成されてきます。
それは次のようなものです。
自分はいつも見守られている。
そして困った時には
その人が自分を助けに来てくれる。
こういう安心感があると、その子はさらに自分で冒険する範囲を広げていきます。
そのうち、多少、恐いことに出会っても平気になります。
たとえば犬に吠えられた場合、最初はすぐに泣いていたのに、そのうち泣かなくなるんですね。
なぜかというと・・・
最初のうちは犬を見ると恐くて母親のところに逃げ帰っていた。
そして、そのたびに母親は抱きしめてくれた。
それを繰り返すうち、
自分はいつも「見守られていて安全だ」という自信がついてくるのです。
やがてその子は犬に出会っても泣かなくなります。
なぜなら自分には(母親という)逃げ帰ることができる安全基地があるということがわかっているからです。
こういうふうに、おおむね1歳半までの間に養育者(多くは親)からどれだけ愛情を与えてもらったかによって、その子の精神の安定度が決まってくるそうです。
幼少時の愛着パターンは大人になっても残る
大人の世界を見回すと、いろんなタイプの人がいます。
たとえば、臆することなく新しい世界に積極的に入っていける人。
その一方で、とにかく引っ込み思案で冒険ができない人。
常に余裕を持って、悠々と生きている人。
逆にいつも悩み事を抱えている人。
なぜ、人間にはこういう違いが出てくるのか?
その本当の原因は
幼い頃の愛着形成が十分だったか否か
によるところが大きいそうです。
赤ちゃんの頃、愛着形成がうまく行った人は大人になっても精神が安定している。
しかし、そうでない人はいろいろな問題を自分で作り出して悩むようになる。
こういうところに気づかず、ただ単に「今の自分をどうするか」だけを考え続けても、悩みは解決しないということです。
そして、この愛着障害の概念をわかりやすく解説した本が先に紹介した本です。
読むのがツラいが対峙すべき問題を教えてくれる
読んでいると、もうすっかり忘れていた幼い頃のことをどんどん思い出してしまい、ツラくなってきます。
でも、対峙しなてくてはならない問題が自分にはあったことが理解できます。
もし、今までMBTIやHSP、発達障害などいろんな本を読んでも、まだ自分自身の問題の根源に突き当たっていない人がいたら、ぜひ読んでみてください。
きっといろんな発見があると思います。
ただ、この本にはいくつかの問題点があるようにも思います。
1つめ、愛着問題をほとんど「母親と赤ちゃん」の関係に絞りすぎている点。
おそらく女性の中には「子育てを母親だけの問題にしないで欲しい」と思う人も多いはずです。
そういう女性にとっては反感を買いそうです。
この部分がこの本に対して大きく賛否が分かれるところでしょう。
2つめ、興味のない昔の作家や哲学者の話ばかりが出てくること。
著者は東京大学の文学部哲学科を中退した後、京都大学の医学部に入り直して精神科医となった人です。
この経歴を悪く解釈すれば、自分の文学趣味の延長として精神医学をやっている頭のいい人・・・みたいな印象ですね。
実際、この本には夏目漱石、太宰治、川端康成、ジャン・ジュネなど国内外の作家をはじめ、ルソー、ショーペンハウエルなどの思想家までが例としてあげられています。
読んでいるうちに、なんだか文芸評論でも読んでいるような気持ちになってくる。
少々・・・いや、結構ウンザリしてきます。
まあ、ここはガマンのしどころですね。
3つめ、どうもこの著者の「愛着障害」論は偏っているのではないか、と思える点。
愛着障害についての本を何冊か見てみると、愛着障害の定義というか、捉え方が専門家によって多少違っています。
しかし著者は自分の「思想」の範囲内だけで愛着障害を説明しているようにも思えます。
そして先にも述べたように、この著者はあまりにも子育てにおける母親の役割に重きを置きすぎている点も偏りと言えるかも知れません。
4つめ、この本には愛着障害の克服法までは書かれていないこと。
愛着障害の克服についてはこの著者の別の本もありますが、私は他の著者が書いた本を当たってみることもお勧めします。
また、今後、このサイトでも愛着障害の克服法について書いていきたいと思っています。
さて、『愛着障害』(岡田尊司 著)の問題点について先にたくさん書いてしまいましたが、これは「都合の悪いことは先に言う」という私なりのサービス精神です。
やはりこの本は「生きづらさ」の根本原因を探りたい人にとって、目を背けてはいけない自分の過去と対峙することの大切さを教えてくれる本であると思っています。
また、この本は愛着障害について書かれた入門書としてはアマゾンでもよく売れている本です。
レビューのバランスもそう悪くはありません。
2011年初版の本なので、内容的にはそろそろ古くなりかけかもしれませんが、今のところ、愛着障害の入門書としてはお勧めです。