生きていくことに困難を感じている人って、たくさんいると思います。
そういう人たちの多くはたとえばMBTIやHSPなどの入門書を読んだり、あるいは自己啓発書を手にしたりします。
でも「生きにくさ」の根本原因を探っていくと「愛着障害」という現象に行き着くことが多いものです。
「愛着障害? そんなの初耳だ・・・」
と言う人もいらっしゃるでしょう。
でも、もしかしたら、あなたが感じる「生きにくさ」の本当の原因がそれかも知れません。
愛着(アタッチメント)って何だろう?
たとえば3歳くらいの子供が公園で遊んでいるところを想像してみてください。
そばのベンチにはその子のママが座っています。
そこに大きな犬を連れた人がやって来たとします。
子供は驚いて泣き、ママのところに駆け寄り、ママにしがみつきます。
ママが「大丈夫だよ」と言って子供をなぐさめているうちに子供は泣きやみます。
その子供はそっと犬の方を振り返り、別に噛みついてきたりしないと知ると安心します。
そしてちょっと手を差し出してみたりして、慣れてくると恐る恐る犬に近づいてみたりします。
大人になってから、こういう幼年時代のことを記憶している人はほとんどいないかも知れません。
だからこうしたことを重要視する人もあまりいないでしょう。
でも、近年、上のような「ママと子供」の関係性が十分にあったか、なかったかにより、その後の人生のあり方が大きく変わってくるということがわかってきました。
上の例で言えば、犬に驚いた子供がママのところに駆け寄る行動を
愛着行動(またはアタッチメント行動)
と呼びます。
これを思いっきり平たく表現するなら、
人に適切に甘えるスキルを身につけていく行動
と言えるでしょう。
そして、この幼年時代の愛着行動によって、適切な「対人関係能力」が身に付いていくことを
愛着形成
と言います。
なぜ愛着形成が大切なのか?
もう一度、最初の公園での光景を振り返ってみましょう。
3歳くらいの子供にとって、この世の中は好奇心をそそる世界であるとともに、危険に満ちた世界でもあります。
目の前のことを楽しみながら、何か恐いものに出会うと不安や恐怖を感じます。
そんな時、その子供はいったんママのところに駆け寄ります。
すると、すっかり安心して、さっきまでのドキドキ感が収まります。
つまり、犬の出現などでいったんはパニックになったのだけれど、ママの胸の中で再度、情緒的な安定を回復するわけですね。
この時、その子供にとって「ママは安全基地になっている」という言い方をします。
この安全基地さえあれば、子供はまた冒険の旅に出て行くことができます。
なぜなら、また何か恐いものに出会っても、逃げ帰って安心を得ることができる安全基地が確保されているからです。
そして月日とともに、子供は徐々に安全基地からの距離、つまり行動半径を広げていけるようになります。
最初はママのベンチから5メートルくらいしか離れられなかったのに、しだいに10メートル、20メートルと離れて遊んでいられるようになるわけですね。
やがて、また恐い何かに出会ったとしても、すぐにママのところに逃げ帰る必要がなくなってきます。
なぜなら、いつでも逃げ帰れる安全基地があるという安心感から、よほどの状況にならない限り、不安になったり、恐怖におののいたりする事がなくなるためです。
簡単に言えば
「情緒が安定し、度胸が付いてくる」
ということでしょうか。
「だからどうなの?
そんなの子供の頃の話でしょ?」
と思うかもしれません。
ところが幼年時代にこうした愛着形成がしっかりとできていないと、大人になってからも情緒が安定しない状態が続いてしまうのです。
つまり
子供時代にやり残したことを引きずる
という状態です。
大人になってからの愛着障害とは?
最初にも述べましたが、幼年期の愛着行動というのは
人に適切に甘えるスキルを身につけていく行動
と言えます。
この「人に適切に甘えるスキル」というのが重要なのです。
このスキルがあるかどうかで、簡単に言えば
「上手に生きられるか、どうか」
あるいは
「楽しく生きられるか、どうか」
が左右されてくるのです。
もし幼年期の愛着形成がうまくできていれば次のようなことが可能になります。
情緒が安定しているため、自分の意志で積極的に出て行ける。
もし困ったことがあれば周囲の人にちゃんと手助けをお願いできる。
また、周囲の人との距離感を適切にはかれるようにもなるでしょう。
逆に愛着形成が不十分なまま大人になった場合、次のようなことが起こります。
情緒が安定しない大人になる。
人を信じることができない。
他人への甘え方がわからない。
他人が甘えてきても、対応の仕方がわからない。
など・・・
愛着障害についてもっと学びたい場合・・・
愛着障害は第二次世界大戦後、イギリスの精神科医、ジョン・ボウルビィが提唱し始めた概念です。
だから歴史がまだ浅い。
また昨今、大注目されている発達障害などに比べると、まだまだ世の中の注目度が低いようなんですね。
アマゾンなどで「愛着障害」と名の付く本を探してみると、評価の高い本が何冊か見つかるでしょう。
でも、案外それらには「読み物的」な本が多いですね。
単に注目を集めて「本を売ってやろう」みたいな本ばかりなのです。
端的に言って、タイトルに「愛着障害」と付いた本に関しては、ちょっと注意した方がいいかもしれません。
そこで最近、私が読んだ本でよかった本を2冊紹介しておきます。
『子育てで一番大切なこと』
(杉山登志郎 講談社現代新書)
『子ども虐待』
(西澤哲 講談社現代新書)
つまり、子育て系の本ですね。
「大人の自分が悩んでいるのに子育ての本なんか読んでいられないよ!」
とか、
「まだ独身なのに、子育てなんか興味ないよ!」
とか思うでしょ?
私も最初、そう思いました。
でも、意外にもこういう本を読んでいると、大人である今の自分の悩みを解決するヒントにたくさん出会えます。
よかったら皆さんもこういった本を手に取ってみてください。
愛着障害については今後も役立つ記事をアップしていく予定です。