トラウマ

毒親のトラウマから最終的に解放される瞬間

トラウマ返し

 

過干渉や過保護などによって

子供の心に一生残る傷を

作ってしまう毒親たち。

 

その対処法を説いた本が

今まで数々出版されてきました。

 

そうした本に書かれている

“心の傷の癒やし方”については

ここでは触れないことにします。

 

そのかわり、

実際に毒親を持ってしまった

私自身の経験について

少しだけ書いてみたいと思います。

 

 

なお、今回の記事は前々回に書いた下の記事の続きです。

ぜひ、あわせてお読みください。

 

内向型とトラウマ
内向型の子に「子供らしい元気さ?」を強要するオトナ 元気な子は「子供らしい」のでしょうか? ハキハキした子は「子供らしい」のでしょうか? そもそもこの「子供らし...

 

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毒親に心の傷を返しに行く

 

最近、ちょっと興味深い本を読みました。

それがこちらの本。

 

『トラウマ返し ― 子どもが親に心の傷を返しに来るとき』

この本は2007年に小野修さんという教育心理学者が書いた本です。

この方は1934年にお生まれになり、長らく児童相談所などで仕事をされ、70歳を過ぎてからこの本を出版されました。

そして、その6年後の2013年に逝去されています。

 

日本に“毒親”という言葉が定着したのはここ十数年ほどのことです。

ところが小野修さんは日本にまだ毒親という言葉さえない時代から、その毒親を相手にしたセミナーのようなものを開催。

その活動を通し、被害者である子供たちを救済する活動をしていらっしゃったそうです。

 

 

さて、このトラウマ返しとは何か?

それは毒親に育てられ、心に深い傷を負った子供が成人してから親に文句を言いに行くことです。

 

ここで『トラウマ返し』に書かれていた例を1つご紹介します。

子供の頃、友だちがみんな川に入ってザリガニを捕っていた。

しかし自分は日頃から親に「川に入ってはいけない」ときつく言われていたため、友だちみんなが楽しそうに川でザリガニを捕っているのを見ていただけだった。

自分にとってはそれが1つのトラウマになっていて、ずっと親を恨んでいた。

それで大人になってから、ある日、それを親に次のように抗議した。

「お母さんが友だちといっしょに川に入るなと言ったせいで、僕は友だちを作れず、社会性が育たなかったじゃないか。どうしてくれるんだ!」と。

 

 

トラウマ返しはイチかバチかの大勝負

 

上のトラウマ返しの例を読んで、どのように思われたでしょうか?

 

「えっ、たったこれだけのこと?」

と思われたなら、たぶんよい親に恵まれた人でしょう。

 

実際にはこのようなトラウマとなる“事件”は小学生の間だけでも毎日のようにあって、それが何百、何千と積み重なったうちの1つが上の例だということです。

こうしたトラウマの集積が当人を生涯にわたって苦しめることになります。

 

子から親へのトラウマ返しは数時間から時には数日間も続くのが普通だそうです。

また、数日間続いた後でいったん終わったかと思うと、また何日後かに再開する場合もあるということです。

 

途中、子ども(といっても、もう立派な大人ですけど)はつらかった昔を思い出し、中には泣きながら親に文句を言い続ける人もいるそうです。

 

 

一方、親からしてみれば全然記憶にないことばかりです。

しかし、自分としては“ちゃんと育てた”つもりだったのに、今頃そんな文句を言われてショックを受ける親も多いそうです。

 

 

ところでこのトラウマ返しによって子供時代の鬱憤をはらすことができた人は、その後の人生がガラリと変わるそうです。

 

それまで鬱々と生きてきたのに、人が変わったように生き生きと働き出す、趣味に打ち込む、恋愛がうまくいくようになる・・・。

また、それを機に親子間の関係もよくなっていく・・・。

 

つまり、人生のあらゆる局面が好転するらしいです。

 

こうした効果を考えると、トラウマ返しは毒親問題を解決する最有効手段のように思われます。

 

 

しかし・・・私が思うに、それはトラウマ返しが順調に進んだ場合ではないでしょうか。

 

ほとんどの親は

「なんで今頃になって、そんな昔のことを言うのか」

「しかも、つまらないことばかりだ」

・・・と思うでしょう。

また、そのように感じた親はすぐに話を打ち切るのが普通だと思います。

(そういったことはこの本には書かれていませんでしたけど)

 

そもそも成人したわが子からのトラウマ返しにじっくり耳を傾ける親なら、最初から毒親であるはずがない、とも思います。

そして、トラウマ返しを拒絶された場合、親子の関係はさらに悪化するばかりか、子が抱える心の傷、トラウマもさらに悪化していくかもしれません。

 

そう考えると、トラウマ返しというのは成功すれば効果抜群。

しかし、たいがいは不成功に終わる。

しかもそれによって状況はさらに悪化する。

まさにイチかバチかの大勝負だということです。

 

 

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私自身のトラウマ返し失敗談

 

ここで私自身の話を少しだけしておきましょう。

 

私の両親は文字通りの毒親でした。

両親ともに毒親というのはなかなかキツいです。

しかし「毒親度」としては、完全に

「父親 < 母親」でしたね。

 

父親は仕事が忙しく、そもそも家にあまりいませんでした。

そして高校時代に交通事故で亡くなったため、父親の毒はその時で終わってしまったのです。

 

より大きな問題は母親の方でした。

その毒は記憶にある限り、私が5歳くらいの時から始まって、成人してからもまだまだ続きました。

 

それである日、もう10年位前のことですが、何かのタイミングで母親と電話で口喧嘩をした際、その話の流れで子供の頃の話を持ち出したんですね。

たった1件だけですが・・・。

 

しかし、その1件で話は終わってしまいました。

母親は「なんで今頃、そんな話を・・・」ということで逆ギレしてしまい、ガチャンと電話を切ってしまいました。

 

それで終わり。

 

もし、母親との会話を再開するとなると、私はやはりその時、途中で終わってしまった「昔の話」をもう一度やりなおさずにはいられないでしょう。

しかし、それは期待できないと思います。

 

 

トラウマの最終解決

 

一方、高校時代に亡くなった父親に関するトラウマはどうなったかというと・・・。

 

もし今、父親が生きていたら、私は母親に対して以上に言いたいことが山ほどあります。

その結果、男どうしということもあって、凄まじい大げんかになったことでしょう。

 

しかし幸い・・・と言ってはいけないのですが、その父親はとっくに他界しています。

そして気づいたことですが、

亡くなった父親に関しては、なぜかトラウマが残っていない

という不思議な事実です。

 

 

ただし、恨みが完全に消えたわけではありません。

ただ、その恨みの感情が、何と言えばいいのでしょうか・・・額縁の中にすっぽりとおさまった1枚の絵みたいな状態になって、倉庫の奥にしまいこまれているような状況なのです。

 

たとえば生きている蛇は恐いけど、その蛇を描いた絵は恐くないですよね。

絵として客観的に見ることができる。

そんな感じになるわけです。

 

子供の頃、あれだけ苦しめられた親なのに、亡くなってしまうと不思議なことにその記憶が化石のように生気を失って、自分の中から痛みが消えていくような感じなのです。

 

 

日本人は亡くなった人を仏様と言いますが、恨みが消えてしまうから昔の人は仏様と呼び始めたのでしょうか。

 

ちょっと話が飛躍しますが、太平洋戦争時の戦争犯罪人たちをどうして靖国神社に祭るのか、という「靖国問題」っていうのがありますよね。

 

私自身、若い頃はわからなかったのですが、どんなに悪いことをした人でも死んでしまうと仏様になる、という思想が日本人にあるからではないか、と気づきました。

(靖国神社は神様を祭るところで、仏様は祭っていませんけども)

 

 

毒親本というのがたくさんあって、中には「トラウマがすっかり消えました」という経験談を書いている人もいます。

 

しかし、よくよく読んでみると、その毒親さんが他界されてからトラウマがなくなっている場合が多いようです。

ただ、著者自身は「自分の考え方を変えることで、トラウマを克服できた」みたいに書いているのですけども。

 

 

たぶん親から受けたトラウマを「考え方を変える」とか「自分を成長させる」ことでいくぶん軽減することは可能でしょう。

 

しかし、相当深いところまで受けてしまった心の傷はなかなか癒えない。

何をしても、癒えない。

これはもう、あきらめるしかないのかもしれません。

 

しかし、たった1つ、解決方法があるとするなら、それは自分の経験から言って、「親の死」なのではないかと思うのです。

 

もちろん、子として親の死を待ち望むなどということはありえません。

考えたくもありません。

 

しかし「親の死によってトラウマが消える」という事実を知っておくことは大切です。

 

「自分は深い心の傷を負ってしまった」と思い込んでいるわけですが、本当に物理的に修復不可能な傷であれば、親が死んだからといって癒えるわけがありません。

 

ところが実際には親が死ぬと、その傷は癒える。

ということは、これまで「自分の心に刻まれた傷だ」と思い込んでいたのは間違いで、単に親から自分の心に投射されている「負のエネルギー」に過ぎないということがわかります。

 

つまり実体の幻(まぼろし)だということです。

親が生きているので、たまたま活性化しているだけです。

 

繰り返しますが、親の死を待ち望むのは人間として正しいことだとは思いません。

しかしながら、親の死によってトラウマから解放されるのも事実。

 

結局、親より長生きしさえすれば、いつの日かそういうカタチでトラウマが消滅する日がやってくる。

それが本当のトラウマ返しであり、トラウマの最終解決になるのだろうと思います。

 

 

「今すぐ解決」を望む人には間に合わないかもしれませんが、トラウマについての1つの所見ということで書くことにしました。

 

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